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2014.09.30 22:14

milkです。

パレットの後編を書きました。

まっすーの舞台、見ましたよ。
いっぱい泣きました。
思い切り引き込まれました。

でもね、このお話は書き上げておきたいから書きました。

続き、良かったら読んでくださいな。


今日もお越し頂きありがとうございました。








ついさっき、この空間に身を投じたばかりなのに…失礼な!
梨香の沸騰した気持ちは伝わらないようだった。やっとの思いで反抗する。

「ギター、ギター、受け取りに来たんだよ?澤田、そう、、、」

押しのけてここから出たい一心で、右手を彼の頬に伸ばした。

「ふふ、かわいぃ…」

頬を殴打する予定の右手首をぐっと掴まれると、あっさりと彼の胸中に収まった。

「ここ、汚いと思う」
「わかってるよぉ…」

力ない反撃にしかならない言葉は、散光ハダカ電球によってそこらじゅうに散乱した。

「ギターは渡したし、澤田は帰ったから」
「…」

自分だけ置いてけぼりになった言葉に、何も返すことはできなかった。
いったいどのくらいの時間が過ぎているんだろう…。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


酔っぱらいのごとく個室から連れ出され、ほんの十数歩先のベッドの上に座らされた。

「ここに居てよ、も少しだから…」

も少しの意味がわからない。

部屋の中を見回すと、床の上にも壁に掛かっている絵と同じようなサイズの紙が散在していた。
どれも中途半端で、喰い散らかしのお菓子が汚く置かれているようだった。

「眠たくなったら横になりなよ?」
「…」
「忘れてた、僕、はるかなひと、と書いて遥人」
「…」
「梨香ちゃんのことは聞いてるから、いいよ」

ぶっきらぼうに言葉を放りながら、イーゼルにはまっているS15くらいのカンバスを眺めていた。

「五線紙いる?」
「…えっ」

遥人は足元のバケツから10cmほどの絵の具を取り出しながら話掛ける。

「振られたんだって…」
「なっ…なんで、そんなこと」
「澤田から聞いた」

くっそ、澤田、余計な情報流して。こんな無関係なヤツに…ふざけてる。
憤りで忘れていた重たい臭いが身体の中に侵入してきた。

「書けなくなっちゃったんでしょ?曲が」
「…っ」
「役に立てるとは思わないけどさ、見ててごらんよ」

良く見るとバケツの中には数十本の絵の具が、整頓されることなく放り込まれていた。

遥人は絵の具を取ると、放置されていた足元の紙を手に取り、じゅるりと絞り出す。
次の絵の具を取ると、今度は別の紙を手に取り、いくつかの山を作るように絞り出す。

遥人の不可思議な行動に梨香はいつしか集中していた。

絞り出した絵の具を指でぐちゃぐちゃにしたかと思うと、カンバスの上に何かを描く。
また別の紙に絵の具を置き、今度は紙の上で何かを描く。指と紙が色に染まっていく。

良く見ていると、絵の具と指の関係は規則性があるようだった。

右手の人差し指はブルー、中指はビリジアン、左手の小指はコーラル、親指はブラック。
時折シンナーのような強い臭いが部屋に充満する…遥人が指を拭いている時だった。

筆は使わず、指と手のひらと手の甲を巧みに使い、紙とカンバスの両方に何かを描いていた。

描いている遥人と、見つめる梨香の間の空気は徐々に同じ温度に変わっていった。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


眩しい朝陽よりも、きんもくせいの香が梨香を目覚めさせた。

わたし、眠っていたの?

遥人のベッドにしっかりとブランケットにくるまっている自分にあたふたする。
さっきまでと何も変わっていない自分の服装を確認しながら、ゆっくりと身体を起こした。

細く空いた窓から光が真っ直ぐ差し込んで、あの重たかった臭いや強烈な臭いが薄らいでいた。
イーゼルにあったS15のカンバスは無く、床に散乱していた紙の一枚が置かれていた。

良く見ると、カラフルな音符が描かれていて、左下には「rica's dream」と描いてある。

ベッドの端に座り直し、イーゼルの絵を手に取り眺めると、油絵だったことが分かった。
まだ乾ききっていないところもあったのか、左手の中指にコバルトブルーの絵の具が付いた。

あの壁の凹凸を持った絵は、実はそれぞれが何かを描いたものだった。
あの粘土のようにねっとりとした臭いも、油絵具だとわかると少し気分が変わってしまう。

なんで、こんなにたくさんの絵をぶら下げているんだろう。
考えているうちに、梨香の頬を涙が伝っていた。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ふっ…と、きんもくせいの香が部屋の中を渦巻いた。

「それはね、紙パレットだよ…」
「…ん?」

入口のドアに凭れて遥人が笑っている。

「それはね、紙パレットっていうんだ」
「パレット?」
「そう、小学校の時、使ったでしょ?」
「あの、パレット?」
「油絵の場合、絵の具を置くのに、紙パレットを使うんだ」
「ふぅーん」

これも、あれも、壁に吊るされているのは全部パレットなんだという。
だから同じような大きさだし、パレットだから完成作品じゃないという。

「梨香ちゃんもモチーフを書き残すでしょ?」
「うん…」
「おんなじようなものさ」

描こうとしている絵は別にあるのだ。パレットはそれを描くために使うもの。

「パレットを残すのは可哀想だから?」

梨香は壁のパレットたちに問いかける。
遥人はにっこり笑って、「違うよ」と答えた。

「モチーフだけ、いっぱい残しておいて、可哀想だと思う?」
「ううん、思わない」
「僕も思わない、同じでしょ?」

なんだか分からないけれど、梨香はくすっと笑った。

「でもね、ここにあるものは捨てられないんだ…」
「絵だからかな?」
「違うよ、さっき話したばかりじゃない?」
「そっか…モチーフなのか」

二人にしかわからない会話は、徐々に二人の距離を狭めていった。

「少しは落ち着いた?」
「ん?」

遥人は梨香の隣に腰かけると肩を抱いた。

「僕、澤田からの使命果たせたのかな?」
「ん?」
「書けそう?曲…」

梨香は返事が上手くできないまま、首を右に傾げた。

「じゃ、おまじない…」

遥人はそっと梨香の唇に、自分の右手の人差し指を置いた。

「ブルーな曲が書けますように…」

きんもくせいの香が二人の周りをくるくると回ると、イーゼルの絵の中に吸い込まれていった。



(おしまい)

いやーそうなんですよ。シゲアキ先生の作品に共鳴したのは、こういう経験があったからでした。

事実、彼の部屋には紙パレットがいーっぱいあって、それは圧巻だったんです。つまり、この紙パレットは事実です。そして吐きそうになったのも事実です。

パレットは捨てるものなのかもしれないけれど、そのパレットにも絵を描いているんだ。って彼が教えてくれたんです。もらっていいよ?とも言ってくれました。
彼は二浪して芸大に入ったばかりで、油絵を描いていたんですけど、わたしの友達でもなんでもなく澤田の元バンドメンバ。なんでそこの家に行ったかも不明(思い出せない)です。

当時、彼氏に振られて曲を書けなくなっていたのは事実ですが、澤田が気を利かせてこういう場を作ったわけではなく、多分バンド関連の何かで辿り着いたんです。
彼の家に放置されたのも事実です。なぜ放置されたかという、絵と音楽の話で盛り上がって置いて行かれただけなのかも?

当時は21歳同志。良い雰囲気になるとかならないとか、そういうのは抜きに寄り添えちゃう。確かなにもありませんでしたけど良い時間でした。一度きりの(笑)

今、画家になっているのかもしれませんが、名前を忘れちゃいました(爆笑)ということで、おしまいです。



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